あいさつ
初めまして、初投稿です。これからよろしくお願いします。
好きな洋楽の歌詞を和訳して紹介したいのですが、和訳サイトはすでに世に溢れているし、なんならAI翻訳に任せたほうが精度が高い訳が帰ってきそうな気さえします。なので、自分が人間であるところを活かすべく、「どうしてこんな作詞ができたんだろうか〜?」という目線で歌詞を分析するブログにしようと思っています。もし自分だったら、どういう思考のプロセスを踏めばのような歌詞が作詞できそうか、を想像してみます。
アーティスト・曲紹介
The Killersはアメリカ(ラスベガス)出身のロックバンドです。2001年から活動しており世界中で大人気(とくにイギリスで愛されています)ですが、日本での知名度は相対的に低いです。僕は2018年の武道館での来日公演で観ることができました。ボーカルのブランドン・フラワーズのスター性を目の当たりにできて本当によかった、圧倒されました。
今回分析するMr. Brightside は2004年リリースの彼らの1stアルバム、Hot Fuss に収録されている曲です。この曲はYouTubeで5.3億再生を誇っています(2023年10月現在)。歌い出しの音程がずっと横ばいだったりとメロディの特徴も面白いのですが、ここでは歌詞にフォーカスします。
歌詞の対訳
Verse 1
Coming out of my cage and I’ve been doing just fine
0:00~0:18
Gotta, gotta be down because I want it all
It started out with a kiss, how did it end up like this?
It was only a kiss, it was only a kiss
自分の檻から抜け出して、僕はうまくやれていた じっと身構えるんだ、全てを手に入れたいから 始まりはキスだった、どうしてこんな終わり方になったんだ? ただのキスだった、あれは単なるキスだ
Now I’m falling asleep and she’s calling a cab
0:19~0:31
While he’s having a smoke and she’s taking a drag
Now they’re going to bed, and my stomach is sick
And it’s all in my head, but she’s touching his
僕が眠りに落ちるとき、彼女はタクシーを呼んでいる
あいつが煙草を吸う間に、彼女が薬をやる間に
今頃あいつらはベッドに向かってる、僕は吐きそうだ
これは全部僕の妄想だけど、彼女はあいつに触れているんだ
Pre-Chorus 1
Chest now, he takes off her dress now
0:32~0:57
Let me go
And I just can’t look, it’s killing me
They’re taking control
胸に触れ、今あいつは彼女の服を脱がす
放してくれ
見られない、耐えられないよ
制御できなくなる
Chorus 1
Jealousy, turning saints into the sea
0:58~1:23
Swimming through sick lullabies, choking on your alibis
But it’s just the price I pay, destiny is calling me
Open up my eager eyes, ‘cause I’m Mr. Brightside
嫉妬は、聖人をも海に飲み込む 吐き気がする子守唄にもがき、君の言い訳に息が詰まる でもこれは僕が払うべき代償だ、運命なんだろう さぁ目を見開くんだ、僕は Mr.Brightside じゃないか
Verse 2, Pre-Chorus 2, Chorus 2
それぞれVerse 1, Pre-Chorus 1, Chorus 1と全く同じ
Outro
I never
3:07~3:43
I never
I never
I never
こんなはずじゃなかった こんなはずじゃなかったんだ ありえないよ もう、二度とないんだ
歌詞分析
タイトル・テーマについて
Mr. Brightside の意味は、物事の明るいところしか見えていない男、楽観的な男という感じか。自分の性格を、いい意味でポジティブ、悪い意味では都合のいいことしか見ようとしない、あるいは見えない人間だと捉えている人物が主人公のようだ。
Chorus の一言目、Jealousy(嫉妬)はこの歌詞のテーマと言ってよいだろう。僕は君のすべてを手に入れようと思っていたのに、君は最近夜な夜な出かけていって別の男と遊んでいるみたいだと気づいてしまった。ただ、嫉妬に燃えて攻撃的になっているというわけではなく、嫉妬心で気が狂いそうでもがき苦しんでいる状態が描かれていく。
世界観について
妄想と現実が極端な配分で対比されている。
現実に起こったことは、きっかけとなった”たったひとつのキス”くらいしか語られない。
対照的に、妄想は非常に具体的で生々しく展開される。自分で妄想を生み出しておきながら、エスカレートしていくその光景に耐えられず「もうやめてくれ!」となっている。嫉妬心が妄想の主導権を奪い、自分の世界が崩壊していることを知る。
展開について
Chorus の「嫉妬は聖人をも海に飲み込み」という表現は、嫉妬心の持つ抗い難いエネルギーを表すとともに、自分を聖人側のカテゴリにしれっと並べており、君との関係における自分のイノセンスさを訴えていると思われる。悪いことをしているのは君だ、だけど、この結末を招いたのは僕なのだろう、と受容しつつある。現実を直視するのは怖くて仕方がないけれど、自分を奮い立たせるために「僕は Mr. Brightside なんだから」と皮肉交じりに言い聞かせる。都合の悪い見たくないものは見ないようにしてしまう性格の人間だって、目を開けば当然現実が一旦は網膜にダメージを与えてくる。終わりゆく関係を受け入れるのは非常に恐ろしいことだが、目を背けて妄想の世界に引き摺り込まれるのはもうやめようとしている。
構成について
1番と2番が全く同じ歌詞である。音源だけ聴いていてもここから特別なニュアンスは感じ取れず、なかなか現実と向き合えずに足踏みしてる様子を表しているのかな、などと思っていたが、改めてyoutubeでミュージックビデオを見たら印象が変わった。1番chorus最後の””cause I’m Mr. Brightside “と歌っている時のブランドンなんかは挑発的(挑戦的?)な表情で、「現実を直視してやるよ、かかってこいよ僕はMr. Brightside だぞ」な意気込みを感じるのだけれど、2番では焦っているような表情が目立ち、現実と戦っている雰囲気を感じる。1番で歌っていたエスカレートした妄想の内容は、あながち誇大妄想というわけでもなかったと知ってしまった、ということなのだろうか。2番chorus後〜アウトロでは追い詰められ、打ちのめされながらも、現実を受け入れることで君が僕にとって過去の存在になったことがわかりやすく表現されていた。
作詞プロセスの想像
自分がいて、愛する人がいて、しかしその人は自分ではない誰かに心を寄せていることに気づいてしまった。嫉妬で気が狂いそうになる様子を、海に溺れる状況に喩えて表現しようと思う。
愛する人はもはや自分の方を向いていないから、「僕と君」とを対比する書き方は難しく、「君とあいつ(と、それを眺める僕)」、という構図になる。君と僕との間に隔たりがあるので、君の行動を描写するのにかなり妄想に頼る部分が大きくなる。とはいえ関係の終わり際になって被害妄想的なものばかりを膨らませているように映ると美しくないので、関係の始まりから僕が妄想過多であったことを示しておきたい。
「始まりはキスだった」以外の客観的事実をなにも書かずに、「僕は自分の殻を破った、いい感じで来れている、君の全てを手に入れるつもりだ」とノリノリな自己評価で始めることで、最初から主人公は都合のいい見方しかできてないんじゃないか感(Mr. Brightside )を演出できそうだ。
嫉妬は「君とあいつ」の具体的なエピソードを書き連ねることで表現するとして、気が狂いそうなこと自体は「妄想が意図せずエスカレートして止まらなくなる」ことで表現しよう。verseの2段落目からpre-chorusにかけて、(音楽的な)場面転換するにもかかわらず、妄想が引き続いている(文章すらまたがって存在している)構成にすれば、制御不能感が出せそうだ。
混乱する心を荒れた海にたとえ、眠ろうとすると迫ってくる嫌な妄想の連続は「吐き気がする子守唄」であり、荒波にも似ている。この苦痛から逃れるには暴走した妄想を無理やり終わらせるしかない、すなわち現実を自分にぶつけるしかない。でもどうやって?
現実を直視するのは怖い。恐怖を乗り越えるために、なんとか自分を説得してやる必要がある。
僕の Mr. Brightside さは、君との関係が終わった一因でもあり、僕が妄想に飲まれている原因でもあるのだろうが、この性格は逆に言えば困難な世界をやり過ごすためのテクニックだ。僕にはこの武器があるんだと自覚し、戦えるようになる。
以上、想像終わり。たぶんこんな感じ。初の試みなので詰めの甘さはゆるしてくださいね。
ちょっと感想
プロの作詞プロセスを素人が烏滸がましくも想像して記事にしてブログに公開しようだなんて、我ながらたいした妄想好きだなと思った。現実を見なさいとか(定職に就きなさいとか)言われるので Mr. Brightside に倣ってちょっくら目を見開いて向き合った方がいいのかもしれない。でもこれ以上打ちのめされたくない。
以下自分用のメモ
- テーマ:嫉妬心に溺れる
- アプローチ:現実、妄想、過剰な妄想、現実
- 拠点:楽観主義
- 海、入眠、吐き気
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