Foo Fighters – Learn to Fly 歌詞分析してみた。

救いが訪れるのを、ただ待ってなんかいられない

人生に行き詰まった時、ただ空を仰ぐしかない気分になることがある。あらゆる努力が無駄に終わってしまい、呆然とすることも多い。祈っていればいつか天使が助けてくれるのかもしれない。願っていればいつか革命的な出来事が起きて逆転できるのかもしれない。だけど、そうしていつまで辛抱を続ければ良いというのだろうか?もう我慢できなくなったとき、運命を自力で手繰り寄せるため、飛躍すべき時が来る。常識に囚われずに、自分の人生を操縦するためのマニュアルの一つとして、この曲を紹介したい。

徒労を続けるのも、救いが訪れるのを待ち続けるのも、もうやめだ。
「この人生」を「僕の人生」にしてみせる。
救いが空にあるというのなら、僕は飛び方を覚えて掴みに行くよ。

ぜひ最後までお付き合い下さい。

アーティスト・曲紹介

Foo Fighters はアメリカ(シアトル)出身のロックバンドです。1994年から活動しており、2021年には「ロックの殿堂」入りを果たしています。フロントマンでギターボーカルのデイヴ・グロールは元Nirvana のドラマーです。カート・コバーンを失ってNirvana が解散した後、デイヴは独力で(すべてのパートを自分で演奏して)アルバムを作り上げ、並行してメンバーを集め、Foo Fighters を結成しました。

今回分析する『Learn to Fly』は1999年にリリースされた彼らの3rdアルバム、「There Is Nothing Left to Lose」に収録されている曲です。

歌詞の対訳

Verse 1

Run and tell all of the angels
This could take all night
Think I need a devil to help me get things right

0:44~0:57
天使たち全員に伝えてくれ
この仕事は一晩中かかりそうだ
悪魔の手も借りた方がいいくらいかもな

Hook me up a new revolution
Cause this one is a lie
We sat around laughin’ and watched the last one die

0:58~1:11
革命が起きたら巻き込んでくれ
ここにあるのは紛い物だから
僕らは目的もなくヘラヘラしていて
最後の嘘も役に立たなくなった

Chorus 1

Now, I’m lookin’ to the sky to save me
Lookin’ for a sign of life
Lookin’ for somethin’ to help me burn out bright
And I’m lookin’ for a complication
Lookin’ cause I’m tired of lyin’
Make my way back home when I learn to fly high

1:12~1:39
今、僕は救いを求めて空を見る
人生の証を探して
僕を熱く輝かせるものを探して
そして、手応えを求めている
だって嘘には飽きたから
高く飛べるようになったら家に帰るよ

Verse 2

I think I’m dyin’ nursing patience
It can wait one night
I’d give it all away if you give me one last try 

1:51~2:04
忍耐力はほぼ限界だよ
一晩くらいなら待てるけど
もう一度と言われたら、全部投げ出してしまいそうだ

We’ll live happily ever trapped
if you just save my life
Run and tell the angels that everything’s alright

2:05~2:18
もし君に救われたら
僕はきっと幸せだろうけど、囚われてしまうんだよ
天使たちには全て順調だと伝えてくれ

Chorus 2

Now I’m lookin’ to the sky to save me
Lookin’ for a sign of life
Lookin’ for somethin’ to help me burn out bright
I’m lookin’ for a complication
Lookin’ cause I’m tired of tryin’
Make my way back home when I learn to fly high
Make my way back home when I learn to

2:19~2:49
今、僕は救いを求めて空を見る
人生の証を探して
僕を熱く輝かせるものを探して
そして、手応えを求めている
だって徒労に飽き飽きしてるから
高く飛べるようになったら家に帰るよ
家に帰るのはその時だ

Bridge

Fly along with me, I can’t quite make it alone
Try to make this life my own
Fly along with me, I can’t quite make it alone
Try to make this life my own

2:50~3:09
僕と一緒に飛んでくれ、独りじゃ上手く行かない
この人生を僕の人生にしてみせる
僕の隣を飛んでくれ、独りじゃいまひとつなんだ
この人生を僕の人生にしてみせる

Chorus

I’m lookin’ to the sky to save me
Lookin’ for a sign of life
Lookin’ for somethin’ to help me burn out bright
And I’m lookin’ for a complication
Lookin’ cause I’m tired of tryin’
Make my way back home when I learn to

3:10~3:34
僕は救いを求めて空を見る
人生の証を探して
僕を熱く輝かせるものを探して
そして、手応えを求めている
だって徒労に飽き飽きしてるから
僕が家に帰るには

I’m lookin’ to the sky to save me
Lookin’ for a sign of life
Lookin’ for somethin’ to help me burn out bright
And I’m lookin’ for a complication
Lookin’ cause I’m tired of tryin’
Make my way back home when I learn to fly high
Make my way back home when I learn to fly
Make my way back home when I learn to

3:35~4:21
僕は救いを求めて空を見る
人生の証を探して
僕を熱く輝かせるものを探して
そして、手応えを求めている
だって徒労に飽き飽きしてるから
高く飛べるようになったら家に帰るよ
飛べるようになったら家に帰るよ
家に帰るのはその時だ

歌詞分析

タイトル「Learn to Fly」について

そのまま直訳すると「飛ぶことを学ぶ」。一般的な訳としては「飛べるようになる」という意味である。鳥と違って本来人間は飛ぶことができないが、昔から人類が飛ぶことを夢見てきた。ライト兄弟による発明などの結果として、現代では多くの人が日常的に飛行機を利用するに至っている。「飛べるようになる」とは、個人にとって本来不可能なことを実現してしまう、型破りなアプローチを意味するだろう。

なぜ空を飛びたいのか

まず空に何があるのか?主人公は空を仰いで救いを求めたり、自分が生きている証を探したりしている。主人公は天使に呼びかけて(悪魔の協力を求めることさえ視野に入れて)自分の現状を打破しようとしている。空には救いや人生のヒントとなる兆候があるようだが、飛べない人間には手を伸ばしても届かないから、天使や悪魔に引き寄せてもらう必要があるのだろう。だが主人公はそのシステムに満足しない。Verse2 では「一晩しか待っていられない」と訴え、もう飛び方を覚えて自力で空へ飛んでしまおうと考える。

You とはどんな存在か

指示代名詞 You は Verse2 で初めて登場する。彼は主人公を救い得る存在であり、天使に伝言を伝えられる存在であるようだ。Bridge では主人公に「一緒に隣で空を飛んでくれ」と言われていることから、彼は空を飛ぶ能力も既に持っているようだ。Verse1 に戻って考えてみると、ここでも主人公は誰かに天使への伝言を頼んでいることから、曲の最初から呼びかけの相手は彼であったと思われる。
以上から、両者の関係を次のように推測した。
・主人公は彼のことを「自分で運命を切り開いている人」だと感じ、尊敬し信頼してきた
・彼は困難な状況にいる主人公に救いの手を差し伸べたが、主人公はあえてそれを拒んだ
・主人公は、「彼のように自分で運命を切り開きたい」という思いを抱いていた
・主人公は「僕も飛べるようになるから、一緒に隣を飛んでくれ」と彼に頼んだ

ミュージック・ビデオでは

ミュージック・ビデオでは主人公たちは飛行機に乗っている乗客として描かれている。機内スタッフのミスで幻覚作用のある薬が混入したコーヒーがパイロット含め多くの乗客たちに振舞われてしまい、飛行は乱れ、機内も混乱状態になる。幸い主人公たちはそのコーヒーを飲んでいなかったため、異変に対処すべく操縦室へ移動し、パイロットに代わって操縦を試みる。マニュアル(表紙に Learn To Fly と書かれている)を読みながら必死に操縦し、無事に着陸する。自分の人生が(ドラッグがきっかけで)乱れたとき、他人任せや運任せにせず、無茶でも挑戦して自力で運命を切り開く、というストーリーに読めるだろう。

作詞プロセスの想像

人生に混乱したとき、いかにして苦境を乗り越えるかを歌詞にするとしたら。
まず現状の問題点を把握し、そこに変化を起こす必要がある。能動的になり、常識に囚われずアプローチする必要がある。そして心強い味方を見つける必要がある。そうすることで主体的に人生を生きれるようになり、運命を切り開けるはずだ。

人生に行き詰まった状態の表現

現状はどのように描くと良いか。飛び方を覚えようとする前の段階であるから、成長意欲や目的意識がないように描くと対比が際立つ。刹那的な快楽に溺れたり、自分を正当化するための嘘をならべていたりする。その嘘もついには役に立たなくなることで、主人公は変化を迫られる。

受動から能動への変化

変化を必要とした主人公は、まずはただ受動的に変化を待つだけだが、やがて能動的に変化を起こそうと動き出す。この成長を段階的に表現するように、前後をそれぞれ Verse1, Verse2 に割り振る。Verse1 では天使に頼むような神頼み的な方法で、何か大きな変革が訪れることを願っている。
Verse2 ではいつまでも他力本願に待ち続けることに痺れを切らして、いよいよ自力で運命を切り開こうと決意する。一旦は助けを求めて呼びかけた天使たちに対して、「やっぱりすべて順調だから大丈夫だよ」と、頼らないことを明らかにし、困難に向き合う姿勢がまるっきり変わったことを示す。

「救ってくれる人」から「パートナー」への変化

運が良ければ、もがき苦しんでいるときに救いの手を差し伸べてくれる人が現れてくれるかもしれない。以前の主人公であれば、喜んでその人に救ってもらったことだろう。しかし受動から能動へと姿勢を切り替えた主人公は違う発想に至ることができる。救ってもらうのではなく、自分自身を救うプロセスを一緒に行なってもらうように依頼する。頼もしいパートナーを獲得し、主人公は決意する。「この人生」を「自分の人生」にしてみせる。


ちょっと感想

Chorus の「Make my way back home when I learn to fly high」のうち、「Make my way back home」の部分にはとくに触れずに分析していたことに気づいた。繰り返し歌われるフレーズであるから、それなりに揺るぎない意味のある部分だと思うが、どういう意図だろうか。
・”覚悟”として訳すなら、「飛べるようになるまで帰らない」と腹を括ったようなニュアンス
・home に着目して”家族を意識したセリフ”として訳すなら、「飛べるようになったら堂々と帰ろう」
後者の解釈の場合、今はまだ家族に顔向けできないと思っている、と想像できる。

故郷(home)を離れて孤独に奮闘していたからこそ、手を差し伸べてくれる友人は非常に貴重な存在であっただろう。その救いをあえて拒み一緒に飛んでくれと頼んだことは、そう考えると一層重みのある決断だったと感じる。

以下自分用のメモ

  • テーマ:自分の人生を生きる、運命を切り開く
  • アプローチ:見上げる、飛ぶ、救われる、自分を救う
  • 拠点:人生の証が欲しい、燃え輝きたい、手応えが欲しい
  • 天使、空、飛行、故郷

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