The Killers – Spaceman 歌詞分析してみた。

あいさつ

初めまして、2投稿目です。これからよろしくお願いします。
好きな洋楽の歌詞を和訳して紹介したいのですが、和訳サイトはすでに世に溢れているし、なんならAI翻訳に任せたほうが精度が高い訳が帰ってきそうな気さえします。なので、自分が人間であるところを活かすべく、「どうしてこんな作詞ができたんだろうか〜?」という目線で歌詞を分析するブログにしようと思っています。もし自分だったら、どういう思考のプロセスを踏めばのような歌詞が作詞できそうか、を想像してみます。

アーティスト・曲紹介

初投稿「The Killers – Mr. Brightside 歌詞分析してみた」に引き続いて、今回もキラーズの名曲を紹介します。

The Killersはアメリカ(ラスベガス)出身のロックバンドです。2001年から活動しており世界中で大人気(とくにイギリスで愛されています)ですが、日本での知名度は相対的に低いです。僕は2018年の武道館での来日公演で観ることができました。ボーカルのブランドン・フラワーズのスター性を目の当たりにできて本当によかった、圧倒されました。

今回分析するSpaceman は2008年リリースの彼らの3rdアルバム、Day & Age に収録されている曲です。YouTubeのミュージックビデオはみんなが妙な格好をしていたり、手作り感溢れるセットだったりで楽しいですよ。

歌詞の対訳

Verse 1

It started with a low light
Next thing I knew, they ripped me from my bed
And then they took my blood type
It left a strange impression in my head

0:00~0:38
仄かな光が見えたと思ったら
次に気がつくと、僕はベッドから引き剥がされた
彼らは僕に採血をして血液型を調べた
不思議な感覚が頭に残ったよ

You know that I was hoping
That I could leave this star-crossed world behind
But when they cut me open
I guess I changed my mind

0:39~0:49
僕が望んでいたことは、知ってるよね
この巡り合わせの悪い星を去りたかったんだ
だけど彼らに切り開かれた時
どうやら僕は気が変わったみたいだ

Pre-Chorus 1

And you know, I might
have just flown too far from the floor this time
‘Cause they’re calling me by my name

0:50~1:03
そう、もしかしたら
今回僕は遠くまで飛びすぎてしまったかもしれない
彼らが僕を呼び戻そうとしてるわけだからね

And they’re zipping white light beams
Disregarding bombs and satellites
That was the turning point
That was one lonely night

1:04~1:15
彼らはまばゆい光を放つ
爆弾も衛星もお構いなしだ
それがターニングポイントだった
一人の夜だった

Chorus 1

The star maker says, “It ain’t so bad”
The dream maker’s gonna make you mad
The spaceman says, “Everybody, look down
It’s all in your mind”

1:16~1:28
スターメーカーは「それも悪くないね」と言う
ドリームメーカーは挑発的だ
スペースマンは言う「みんな地上をご覧、全部空想だよ」

Verse 2

Well, now I’m back at home, and
I’m looking forward to this life I live
You know it’s gonna haunt me
So hesitation to this life I give

1:29~1:41
さて、僕は家に帰ってきた
自分の生きている人生に前向きでいよう
でもずっと付き纏うんだろうな
自分の生かしてる人生に気おくれするんだ

You think you might cross over
You’re caught between the devil and the deep blue sea
You’d better look it over
Before you make that leap

1:42~1:53
君も踏み越えてしまったかもしれないんだね
進むも地獄、戻るも地獄な境界線
でもちょっと見渡してみた方がいい
その跳躍をする前にね

Pre-Chorus 2

And you know I’m fine
But I hear those voices at night sometimes
They justify my claim

1:54~2:05
あのね、僕は大丈夫さ
だけど悪魔の囁きが聴こえる夜も時々あるんだ
彼らは僕の叫びを正当化してくる

And the public don’t dwell on my transmission
‘Cause it wasn’t televised
But it was the turning point
Oh, what a lonely night

2:06~2:19
普通の人々は僕のメッセージを読んでくれない
テレビ放映でもされない限りね
だけどターニングポイントになった
あぁこれこそ孤独な夜だった

Chorus 2

The star maker says, “It ain’t so bad”
The dream maker’s gonna make you mad
The spaceman says, “Everybody, look down
It’s all in your mind”
x2

2:20~2:45
スターメーカーは「それも悪くないね」と言う
ドリームメーカーは挑発的だ
スペースマンは言う「みんな地上をご覧、全部空想だよ」

Bridge

My global position systems are vocally addressed
They say the Nile used to run from east to west
They say the Nile used to run from east to west

2:57~3:16
僕のGPSの声が、この星での居場所を知らせる
曰く「かつてナイル川は東から西に流れていた」
「かつてナイル川は東から西に流れていた」と

Pre-Chorus 3

I’m fine
But I hear those voices at night
Sometimes

3:17~3:28
僕は大丈夫
だけど、悪魔の囁きが聴こえる夜もある
ときどきね

Chorus 3

The star maker says, “It ain’t so bad”
The dream maker’s gonna make you mad
The spaceman says, “Everybody, look down
It’s all in your mind”
x2

3:29~4:04
スターメーカーは「それも悪くないね」と言う
ドリームメーカーは挑発的だ
スペースマンは言う「みんな地上をご覧、全部空想だよ」

Outro

It’s all in my mind
It’s all in my mind

4:05~4:38
全部、僕の中にあるんだ
全部、僕が思い描くんだ

歌詞分析

タイトル「Spaceman」について

Spaceman(宇宙飛行士)はChorusに登場する。同じくChorusに毎回並んで登場する “star maker” と “dream maker” との関係の中で解釈する必要がある。僕は “star maker” を「星を作り出すもの」→「エネルギー・衝動」の象徴として捉え、”dream maker” を「夢を作り出すもの」→「理想・克己心?」の象徴として捉え、”spaceman” は「宇宙と地球を行き来するもの」→「自分の世界と現実とをつなぐ窓」だと考えた。星空の下のサーカスのようなMVの雰囲気と合わせて、僕は Chorus のメッセージを次のように解釈した。

衝動や理想は君の人生を彩り輝かせてくれる。
でも、ずっと星空を目指しているとときに自分を追い詰めてしまうこともある。
そんなときは自分を苦しめないで、思い込みに囚われずに地平を見てごらん。

テーマはおそらく、希死念慮との向き合い方について

「この巡り合わせの悪い星を去りたかったんだ」「遠くまで飛びすぎてしまった」などの表現から、飛び降りでの自殺未遂をしたことが暗に示されていると思われる。自殺に失敗して救命された主人公が、賑やかな自分の分身たちと向き合い、戸惑いながらも生きることを選択する物語だろう。”star maker”(=衝動)に身を任せ過ぎず、逆に “dream maker”(=理想)にも押し潰されてないように、それらの間で折り合いをつけて現実を生きていくことの難しさと偉大さが、”spaceman” のタイトルにぴったりだと思う。

声やセリフの区別について

自己との対話における”star maker” や “spaceman” の発言(内部からの声)以外にも、この歌詞では声がいくつか登場しており、それらはいずれも外部からの声とみなすことができ、3 種類存在する。
1つ目はPre-Chorus1 で、生死の境目にいた主人公が(親か恋人か医者かわからないが誰かに)自分の名前を呼ばれるのを聞き、自分の帰るべき場所を示すような強い光を感じ、生きることを選ぶシーン。
2つ目はPre-Chorus2 で、表面的には精神が安定している主人公が、声を聞いて希死念慮を認めているようなシーン。自殺を後押ししてしまうような声なので、対訳ではわかりやすいように「悪魔の囁き」とやや誇張して翻訳した。
3つ目はBridge で、現在地を知ろうとGPS(Global Positioning System)を開いたら『ナイル川はかつて東から西に流れていました』だなんてデタラメなセリフを返された、というシチュエーション。これが意味するところは、自分の居場所を示してくれる声に耳をすましたがその言葉は壮大にナンセンスだった、つまりこの星に自分の居場所なんてものはないと感じてしまったということだろう。
とくに1つ目と3つ目の声は呼応していると思う。自分を呼ぶ声があったから宇宙から帰還した(生きることを選んだ)ってのに、結局どうだ、GPSの言うように僕はこの星で遭難してしまっている(居場所なんてみつからない)。

作詞プロセスの想像

自殺を試みて飛び降りて無重力状態となった自分に、星を飛び出す宇宙飛行士のイメージを重ねた。自殺は失敗に終わり、生きていくことを選ぶが…。孤独や繰り返す希死念慮との向き合い方を、星や宇宙のスケールを持たせた歌詞で表現しよう。

この星に居心地の悪さを感じて飛び出した(飛び降りた)主人公だが、その内面については抑鬱に飲まれる側面よりむしろ、感受性豊かな人間性が輝く側面を描きたい。自己との対話を鮮やかに示すため、Chorus では自分の中の様々な側面を独立した人格のように名付けて登場させよう。

自殺未遂を経て生きることを選んだことで、その後の人生は「与えられた生」から「自分で与えた生」へと意味合いを変える。その重圧がつきまとう苦しみは、一般の人には理解され難い。Pre-Chorus1 で(生死を彷徨う)一人の闘いという意味での lonely night を示しておくことで、Pre-Chorus2 での周囲の他者が誰ひとり自分を理解してくれないことが、もっと深刻な孤独であると気づく過程を印象付けよう。

自分の周囲に居場所が見つからないことを、Pre-Chorus2 ではテレビ塔から電波を受信できる半径のスケールで表した。Bridge ではさらに、人工衛星による電波の届く範囲すなわち惑星全体での孤独だと畳み掛けて希死念慮を揺さぶってくる逆境を描く。

以上の構成で、Chorus 1〜3は順に、「生きていくこと」の受容、「孤独とともに生きていくこと」の受容、「希死念慮とともに生きていくこと」の受容を描くことができる。同時に、いずれのプロセスもその課題や立ち向かうモチベーションは自分の捉え方で変わってくるもので、必要以上に囚われて苦しまないようにと言い聞かせるものにもなる。


以上、想像終わり。たぶんこんな感じ。テレビ塔→人工衛星の展開に気づいて感動したんですけどどうですか、合ってますかね。

ちょっと感想

It’s all in your mind の訳し方にだいぶ迷った。気のせいだよ、とか考え方次第だよ、という表現はなんか無責任というか愛がなさすぎて、自分の分身が言うセリフとしてはいまいちに感じたので、空想だよ、にしてみた(けど、完全にしっくりきているわけではない…)。

ぞっとするほどの孤独が歌われているにもかかわらず、曲全体として全く鬱々としておらず、とても明るい雰囲気があるのがこの曲の魅力だと思う。誰にも読まれないであろうにインターネッツという宇宙空間に向けてこんなにも真剣に記事を書いているの、この主人公に通じるところがある気がする。孤独とともに生きていこう。

以下自分用のメモ

  • テーマ:希死念慮を受け入れて生きる
  • アプローチ:自殺企図、生、跳躍、着地
  • 拠点:自我(衝動 理想)、孤独
  • 宇宙、星、現在地、声

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