親友(悪友)との向き合い方
ツインギターボーカルが本当に格好いいバンドですが、その片方のピート・ドハーティの薬物中毒が酷く、最後はそのせいで解散しています。相棒のカール・バラーからピートに向けたメッセージが込められた歌詞です。
歌詞の対訳
Verse 1
Don’t look back into the sun
Now you know that the time is come
And they said that it would never come for you, oh-oh-oh-oh
幻想へと振り返るなよ もうわかるだろ、"その時"が来てるんだって 君には訪れやしないって、あいつらは言ったけどさ
Oh, my friend, you haven’t changed
You’re looking rough and living strange
And I know you’ve got a taste for it too, oh-oh-oh-oh
あぁ友よ、君は変わってないな 不健康そうで、奇妙な生き方をしていて わかるよ、君はそんな状態も気に入ったんだろうけど
Chorus 1
They will never forgive you, but they won’t let you go, oh no
She will never forgive you, but she won’t let you go, oh no
あいつらは君を許さない、かと言って見放してもくれないぜ、oh no 彼女は君を許さない、かと言って忘れてくれるわけでもないんだ、oh no
Verse 2
Don’t look back into the sun
You’ve cast your pearls, but you’re on the run
And all the lies you said, who did you save?
幻想の方へと振り返るなよ 君は大切なものを与えてくれた、でも今は逃走中だ たくさんの嘘を吐いて、君は誰を救ったんだい?
And then, they played that song at the death disco
It started fast, but it ends so slow
And all the time it reminded me of you
それから、デス・ディスコであの曲がかかった 始まりが速くて、終わりはとてもゆっくりで いつもそれが君を思い起こさせたよ
Chorus 2
They will never forgive you, but they won’t let you go (let me go)
She will never forgive you, but she won’t let you go, oh no
あいつらは君を許さない、かと言って見放してもくれないぜ(放してくれ!) 彼女は君を許さない、かと言って忘れてくれるわけでもないんだ、oh no
Chorus 3
They will never forgive you, but they won’t let you go (let me go)
She will never forgive you, but she won’t let you go, oh no
あいつらは君を許さない、かと言って見放してもくれないぜ(放してくれ!) 彼女は君を許さない、かと言って忘れてくれるわけでもないんだ、oh no
歌詞分析
タイトル「Don’t Look Back Into The Sun」について
Oasisの曲とThe Velvet undergroundの曲のタイトルを組み合わせて作ったとインタビューに答えているようです。Oasis の『Don’t Look Back In Anger』と The Velvet Undergroundの『Ride Into The Sun』だと思います。
『Don’t Look Back In Anger』の方は知名度抜群な一方で、『Ride Into The Sun』の方はかなり隠れた(当初アルバムに収録されなかった)名曲といった感じです。
ピート・ドハーティーは『Someone Else To Be』という曲名で実質『Ride Into The Sun』のカバーもリリースしており、尚且つその歌詞に『Don’t Look Back In Anger』の歌詞の一部を埋め込んでいるくらいなので、この2曲が彼にとって特別な意味を持っていることは間違いないでしょう。
キーワード・フレーズの意味
・Don’t look back:振り返るな。特に、過去を振り返るなというニュアンスがありそうです。『Don’t Look Back In Anger』が、手遅れとわかっていても今から変えられることをやろう、理想的でなくても思い出を憎しみに変えてしまうのはやめよう、という歌詞なので、振り返るのは物理的な背後ではなく、過去と考えます。
・Sun:妄想・幻想を意味していると考えます。『Ride Into The Sun』が都会を離れて別の人間として別の人生を生きることをに救いを見出す歌詞であることを考慮して、Sun には現実逃避の向かう先の、美的な象徴としてのイメージがあると考えました。
・Don’t look back into the sun:上記2つより、このフレーズは「現状が理想的でないからといって、過去の栄光に縋って現実逃避をするのはやめろ」という意味だと解釈できます。
・the time:現実逃避をやめる時、現実に向き合う時、生き方を改める時。(薬物への依存をやめる時?)
登場人物について
“I” はカール・バラー、“You” はピート・ドハーティーとして、“They” は残りのバンドメンバーかファンか世間でしょうか。ただ、歌詞の普遍性を殺してしまわないために、必要以上に具体的考えなくていいのかなとも思います。
あと、”She” が Chorus で唐突に出てきますが、これは『Don’t Look Back In Anger』の Chorus に同じく唐突に出てくる “Sally” を思い起こさせました。“She” は “You” のかつての恋人で、彼に愛想を尽かして別れたけれども、今でも彼の人生を案じてあげている人なのかなと思います。
作詞プロセスの想像
相棒を理解してやれなかった
verse 2 には “don’t cast your pearls before swine” というイディオムを元にしたような表現があります。このイディオムの意味は「豚に真珠」です。貴重なものを分け与えても、相手がその大切さを理解して受け取ってくれないのなら、やめた方がいい。カールには、ピートがバンドにもたらしてくれていた貢献を十分に評価してやれなかったという後悔があるのかもしれません。
なので “You’ve cast your pearls, but you’re on the run” は、「君は身を捧げたのに、仲間に価値を認めてもらえず、すれ違い、薬物に溺れ、余計に居場所を失って逃げ惑っている」、そんなプロセスを感じさせるフレーズです。真珠を与えた側なのに、泥棒かのように逃走している、という表現も面白いです。
続く「たくさんの嘘を吐いて誰を救ったのか?」という表現は、反語的に読むと「自分を守るためにそんなに嘘が必要だったのか?」とも捉えられそうです。ピートとのすれ違いや、信頼が破綻していたことが伝わります。
僕は許している
Chorus であいつらも彼女も君を許さないだろう、放さないだろう、と繰り返し歌っていますが、“I will never forgive you” とは言っていません。おそらく僕は彼を許しており、彼が望むのならばそのまま放っておいてあげたい気持ちもあるのです。
でも本音は彼に戻ってきてほしい、また一緒に活動したい、だからこそ、あいつらや彼女を引き合いに出してこの歌を歌っているんでしょうね。ちょっと不器用だけれど純粋な友情が素敵じゃありませんか。
ちょっと感想
個人的な話で恐縮ですが僕自身が大学生の頃にツインギターボーカルのバンドをやっていたのもあって、The Libertines はどうしようもなく格好よく見えるんですよ。幸いうちはメンバーの誰も薬物中毒ではありませんでしたし、だから特別共感するはずはないんですが、なんか解像度高くエモーションを妄想できるから好きなんでしょうね。
以下自分用のメモ
- テーマ:すれ違い、友情、人間関係
- アプローチ:幻想、現実、逃走
- 拠点:取り戻したい
- 太陽、振り返る
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